
フロン排出抑制法では、業務用の空調機器や冷凍冷蔵機器に使用されているフロン類の漏えいを防止するため、定期点検を義務付けています。対象となる機器は、エアコンや冷蔵庫、冷凍機などで、機器の圧縮機に用いられる電動機の定格出力が7.5kW以上のものは3ヶ月に1回以上、7.5kW未満のものは3年に1回以上の簡易点検が必要です。また、フロン類の充填量が一定量を超える機器については、専門業者による定期点検も必要となります。
【具体例】
レストランで使用している業務用エアコン(定格出力10kW)の場合、3ヶ月に1回の簡易点検と、フロン類の充填量が50kg以上の場合は年1回の専門業者による点検が必要です。
2. フロン点検の具体的な手順と必要な道具
フロン点検では、まず目視・聴覚による確認から始めます。必要な道具は、点検チェックシート、温度計、発泡液(石けん水)、懐中電灯などです。点検のポイントは、機器の異常振動・異常音の有無、腐食・錆・油にじみの確認、配管接続部からの漏えいチェックです。簡易点検は機器管理者が実施できますが、専門点検では、電子式漏えい検知器やガス漏れ検知器を使用した精密な検査が必要となるため、資格を持った専門業者に依頼する必要があります。
【具体例】
業務用冷蔵庫の点検では、圧縮機周辺の配管接続部に発泡液を塗布し、気泡の発生がないかを確認します。また、庫内温度を温度計で測定し、通常値から大きくずれていないかをチェックします。
3. フロン漏えい時の対応方法と記録の保管
フロン漏えいが発生した場合、迅速かつ適切な対応が求められます。まず、漏えいを発見したら直ちに業務用エアコンの運転を停止し、専門の点検業者に連絡を取る必要があります。フロン漏えい箇所の特定と修理は、第一種フロン類充填回収業者に依頼することが法律で定められています。修理完了後は、漏えい個所の特定方法、漏えい量の見積もり、修理の内容などを記録し、その記録を3年間保管しなければなりません。また、年間漏えい量が1,000CO2-t以上の場合は、事故として国への報告が必要となります。フロン排出抑制法に基づく点検記録簿には、機器の所有者、設置場所、点検実施者、点検年月日、漏えい防止措置の実施内容を正確に記載することが重要です。
【具体例】
漏えい量報告の計算例:R410Aが年間50kg漏えいした場合
CO2換算量 = 50kg × GWP値(2,090) = 104.5t-CO2
この場合、1,000CO2-t未満のため報告義務なし
定期点検や修理の際は、専門の技術者による確実な点検と適切な記録の保管が不可欠です。フロン排出による環境への影響を最小限に抑えるため、機器の管理者は法令遵守と適切な対応手順の理解が求められます。フロン漏えいの早期発見と迅速な対応は、環境保護だけでなく、機器の効率的な運転や長寿命化にもつながります。そのため、定期的な簡易点検と専門家による定期点検を確実に実施し、異常が見られた場合は速やかに対処することが重要です。また、点検・整備の記録は、将来のメンテナンス計画の立案や機器の更新時期の判断にも活用できる重要な資料となります。機器管理者は、これらの記録を適切に保管・管理し、法令で定められた期間内はいつでも提示できる状態に保っておく必要があります。